男性におけるフェミニズム

現状日本は性別間の社会的格差、経済的格差、また性被害の受けやすさの違いなどから、男尊女卑社会であることは言うまでもない。生まれながらの自分では選択することのできない身体的属性によってそのような格差が生じていることは差別以外の何物でもない。この格差をおかしいと思えない男性はそもそも差別主義者であり存在するだけで害であるが、この格差をおかしいと思った男性が害でないかというとそんなことはない。女性差別をする加害者は男性であり、どんなに綺麗な言葉で反女性差別を訴えても加害者側であることから逃れることはできない。加害者になりうる女性差別を受けていない男性が女性に安易に寄り添おうとする行為は、本当に女性のための行動なのか。フェミニズムは女性の身体や精神をもったすべての人を救うために存在するものであって、男性側はフェミニズムに些細な利益も求めてはならない。「女性によく見られたい」だけのフェミニズム気取りは逆に女性への攻撃でしかない。加害者になりえて社会的経済的立場が上である男性が女性差別に対して発言しようとするときは、一度立ち止まって考えるべきだ。その発言をすることは本当の意味で女性のためになるのか。

 

女性差別被害の過小評価

女性差別において、男性は加害者であり女性は被害者である。被害者を抑圧ばかりしている日本社会では、被害者の声を聞くことができる機会は少ない。性犯罪のニュースなどを見ても、どこか他人事のように考えていないか。決して性犯罪は他人事ではなく、自分の身近な人が日常的に何の前触れもなく被害を受けているものであって、遠い世界の話では決してない。もし被害者の声を聞ける機会があるのであれば、一言一句漏らさず受け止めるべきだ。自分が聞いたことがなかったり、知らなかったことだとしても、性犯罪や女性差別は平然と存在している。その被害を過小評価することは、明らかな二次被害であり、あってはならない。「言うほど女性差別はないのでは…」「考え過ぎでは…」などといった男性目線の意見は加害でしかない。無知ではすまされない。知らないでいていいほど軽い問題ではない。

 

周囲男性への過大評価

自分と仲が良く性格が良い(と男性側に思われている)男性が女性差別的であることは、平然と起こり得る。男性は女性差別を受けていないのだから、誰が女性差別的な考えを持っているかなんて男性側が判断できることではない。むしろ周りから好感をもたれやすいような人が当たり前のように女性差別的な意識を持っているために、この差別は根強く厄介なのだ。一回でもその男性と女性差別について話し合ったことがあるのか。仮に話し合ったことがあるとしても、どのような発言から差別的でないと判断したのか。反女性差別的発言をする人が女性差別的行動を取らないとなぜ男性が判断できるのか。周囲の男性を根拠もなしに過大評価してはならない。自分も含めて全男性が一瞬にして女性差別的になりうる。

 

女性差別撤廃のために男性がやるべきこと

日本人男性として生まれ、日本人男性として育てられている人は基本的に男尊女卑思想が植え付けられている。男性は男性である以上、女性がどれほどの差別を受けているのか、どれほどの抑圧を受けているのかを正確に知ることはできないし、共感することもできない。それでも人口の半分の属性の人が不当な扱いを受けていることに対して怒りの感情を持つことは、人間であれば当然のことである。男性であっても女性差別撤廃のために何かしらの運動をしたいという思いは貴重であるが、その思いを正しい方向にぶつけるためによく考える必要がある。本来当たり前の思想であるはずの女性差別反対を表明するだけで褒められる時代から早く抜け出さなければならない。

男性のフェミニズム発言は一歩間違えれば、ただの観測者としての男性が上から目線で女性差別に言及しているだけになる。人から観察対象にされていい気分になる人はいない。適当な思いで女性差別について話してはならない。男性が女性差別撤廃のためにできることは決して、女性に対して女性差別を語ることじゃない。自分の道徳心をどれだけ向上させても差別の被害を受ける女性が減ることはない。

女性差別撤廃のために男性がやるべきことは、男性と女性差別について話し合うことしかない。日常的に男性が行う女性差別的行動を見かけたときに、見て見ぬふりをせずにしっかりと異議を申し立てられるように勇気を出す。組織において上のポジションにつくのが男性ばかりであることを常に疑問に思って周りと議論できるようにする。少しでも自分の周りの環境を変えていけるように地道に行動していく。できることは多分それしかない。行動した結果自分が傷つくことがあったとしても、本当の意味で女性のためを思うならそれ以外に方法はない。下手に寄り添って邪魔をするのではなく、行動に移そう。

 

補足メンズリブについて

男性の中にも「男性らしくあれ」というジェンダー規範に苦しむ人がいるだろう。しかしその攻撃対象を女性に向けることは、ただ性別間の権力勾配に従って女性を差別しているだけに過ぎない。フェミニズムを無視したメンズリブは、女性差別的であり許容することはできない。フェミニズムメンズリブも「生まれた属性によらずその人がその人らしく生きる」ことができる世の中を作るという点で同じであるはずなので、フェミニズムを推進した未来には自ずとメンズリブも達成されているはずである。フェミニズムは決して男性のためのものではないが、フェミニズムの思想が当たり前の世界はきっとどんな属性の人にとっても生きやすいものであると信じています。